=自らつかみ取ろうとする成長態度を育成する=

 ロシアの心理学者、レフ=ヴィゴツキーは、子どもの発達や教育においては、その子どもが、今、なにができるかではなく、その子どもが、今、まさに、何ができるようになろうとしているのかということに焦点を当てるべきであるということをその著作の中で述べています。(「発達の最近接領域の理論」)

 「いま、できること」は、発達の面では、既に発達し終えてしまっていることを意味します。ですから、日々の子どもたちの成長の営みの後ろにあります。しかし、わたくしたちが、子どもたちに見、思いを巡らせているのは、今より、もっと、もっと広がっている未来です。子どもたち自身が、自ら成長したいと願い、お兄さん、お姉さんになった自分を夢見ていろいろなことに日々努力する。昨日できなかったことが、今日はできるようになる。今日は、親御さんや、先生や、お友だちの手助けや協力があってできたことが、明日は、一人でも、自力でできるようになるところに子どもたちの成長があり、やがては自身でそのような成長ができるようにしてあげるところに教育の核心があります。そして、わたくしたちもそのような教育をしたいと考えています。

 お誕生会で、「おかあさん(おとうさん)になりたい」と夢を発表するお友だちがいます。素晴らしい夢です。ご両親を手本に様々な行いを身に付けていくことでしょう。発表もたとえ上手にできなくとも、自らの鼓動を感じながら、皆の前で、たった一人で声を発する、その一歩を自ら踏み出すことがその子の成長に通じます。

 幼稚園は、同じ学年(学級)なら1年以内に、全体を見渡しても年の差は2年以内のお友だち同士の集まりです。ですから、互いができることは、互いにとって、実現可能な夢でもあります。お友だちや、お兄さん、お姉さんの「さかあがり」を見て、何度も練習を繰り返すお友だちは、できるようになりたくてしかたありません。取得まで程遠いところから、少しずつ足が鉄棒に近づいてゆき、それが太ももになり、腰が棒にかかれば、あとは起き上がるだけです。

 ときに緊張を乗り越え、ときにおとなでは真似できないほどの粘り強さを発揮させるものは、子どもたち一人ひとりが、今より成長したいと強く願い、自ら掴まずにはいられない力強い心です。非認知的能力の育成の大切さが注目されている今日、子どもたち自身の成長を力強く下支えする人格を幼児期にしっかり培ってあげることを教育の根幹としています。

=楽しく学ぶ=

子どもたちは、みんな、学ぶことが大好きです。

学びの楽しさは、次の3点に集約されると考えています。

〇自分がよりよくなる楽しさ(できるようになる・じょうずになる)    

〇知る楽しさ(いろいろなことを知る楽しさ・わかる嬉しさ・知的欲求を満たす心地よさ

〇学びあいの楽しさ

中でも大切にしているのは、「学びあい」です。

子どもたちが学び、身に付ける様々なことは、他とのかかわりの中でその価値を増し、より確かなものになるからです。

学んだことは、自分だけでなく、一緒に学んだ友だちも豊かにするから、喜びも増します。

そして、なにより、お友だちとの学びあいに中には、自己成長の夢があり、学びの原動力になるからです。

お子さまお一人おひとりの学びを大切にすることとあわせて、身に付けたことをもって、積極的にお友だちに関わる場を大切にして、子どもたちが自らの学びを自身できちんと価値づけられるようにしています。

=一人ひとりに感動体験を=

幼稚園は、子どもたちが暮らし、学ぶ場所で、園外とは大きく異なる特殊な環境です。日常生活に近い部分もありますが、非日常の部分も在ります。おうちではできないことができたり、おうちでできることでももっと大規模にできたりします。おうちでは見過ごしがちなことでも、お友だちとの学びあいの中で、その面白さを感じることもできます。「楽しいと感じること」「不思議と思うもの」「うれしいこと」「すごいと思うこと」「きれいと思うこと」「面白いと思うこと」「何となく厳かな気持ちになること」等々、その全てが、感動体験です。「心の栄養」「思い出づくり」などど考えてはいません。しかし、お子さまの将来にわたって、お子さま自身が、誰かに語り、教えてあげたくなるような、また、友だちや、親御さんや、我が子に体験してほしいと思うような感動的な体験をさせてあげたい真砂幼稚園です。